CGWORLD-Spirited-#2 レポート② TANGE FILMS様

2012/07/13 16:00-19:30
2本めのレポートは、TANGE FILMS様の講演。POPでキャッチー。アナログテイストが魅力。

以下、講演内容です。

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■■■TANGE FILMS■■■
http://www.tangefilms.jp/


■■講演者■■

  • 丹羽様:ディレクション、アニメーター
    • 多摩美卒。立体、コマ撮りアニメーション。すいどーばたの非常勤講師。

余談。先のTripple Additional様の講演をご覧になって、同じ映像制作でも、AEの中身が随分違うなあ、との感想を持たれたとのこと。TANGE FILMSではプログラム、シミュレーションは使わないそうです。


■■会社紹介■■
まずはSHOWREELを見させていただきました。セミナーでご紹介頂いたのはできたてほやほやらしいので、Youtubeにはまだアップされてないです。過去のSHOWREELはこちら。

  • 2006年設立。2009年株式会社化
  • 社員4名、外注1名の体制で活動中。
    • アニメーション:1名、デザイン:1名、3D:1名
    • 担当は決まっているが少人数なので、他のセクションも触る。少人数スタジオのいいところ。
  • 受注+オリジナル作品。
    • 5分弱の仕事が毎月。+別件。忙しい時は月に10本とか。


■■代表作■■

スペースシャワーTVとかMusic On TVのアイキャッチはいろいろおもしろいので要チェック!。リンク先分からんけど(昔あったんだけどなあ…)

  • 今日の占いカウントダウンHYPER
  • High&LOW(自主制作)

  • mashcomix とのコラボ作品。Stush45号に掲載。

Microsoftのビデオアワードにもノミネート?との話もあったような…。
mashcomix→http://www.mashcomix.com/
stush→http://stash.nowonmedia.com/

  • スマスマのブリッジ映像。始めて3Dで作った。ベビスマにも出演。

ベビスマの映像集めたDVDとか欲しいんだけどないのかなあ…

  • NHK天才てれびくん」のOP
  • NHK「シャキーン!」のクイズコーナー、アニメーション作成。(2年間継続)
  • 地デジ移行のPV。
  • OVER THE DOGSのMV(実写撮影+手書きロトスコープ。ロゴデザインとかも)
  • 他にも、VJやったりとか活動されているみたいです。


■■命題■■

  • 2D(アナログ)と3D(デジタル)の融合。
    • これをやらなくなると、他の映像会社と変わらなくなってしまう。

以下、3作品の紹介とメイキングをお話ししていただきました。

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■■AZUMA HITOMI PV「きらきら」■■

AZUMA HITOMI Official Website
http://azumahitomi.com/top.html

  • 漫画家の西島大介さんのイラストを使って作成。

→Daisuke NISHIJIMA simasima
http://www.simasima.jp/index.html

  • 企画から仕上げまでを担当。


■イメージ

  • 楽曲を聞いて印象に残ったのが、デジタルトラック+懐かしい歌声。
    • TANGE FILMSの表現にマッチング。
  • 「フェナキストスコープ」を手法として使用。
    • 1枚の絵を回すことで、絵が動き出す。

フェナキストスコープ - Wikipedia

    • これを3次元的に応用した、ゾートロープって技法もある。(ジブリ森美術館にあるよね)

回転のぞき絵 - Wikipedia

    • 堂本剛のPVで、人間スケールのゾートロープを使った。


■企画書

  • デジタルの上に浮揚するアナログ感
  • 表現手法
    • 今回は、フェナキストスコープを使うので、通常のコンテでは提案出来ない。回転盤を使った提案。
    • 6枚の絵を描いた。曲の構成に合わせると、6個くらいになる。
  • ストーリーライン
    • ダンスポップだけど、内容は暗い。ひきこもりの歌。
    • 孤独な少女の悩みからの開放。一歩歩き出し、前進する。


■構成

  • 1.誕生のシーン
    • 16コマで作成。最初なので、ガランとしている。
  • 2.くりかえず退屈な日々
    • 静と動、有機と無機、孤独、孤立の対比。
  • 3.孤独に落ちていく
    • サビなので山をつくる。賑やかな絵。
    • 幾何図形に飲み込まれていく。
    • このシーンだけ、女の子がZ方向(奥)にも動いていく。
  • 4.女の子が歩き始める
    • 2番。秩序へ向かう。
    • 机に囲まれているイメージ
  • 5.またも降り注ぐ困難
    • 雨のシーン。
    • 2番サビ。今度は図形のほうが奥方向に進む。
  • 6.解決
    • 大サビ。
    • 夜空。プラネタリウムのイメージ。曲のタイトル「きらきら」から。


■ポイント

  • 誕生から昇華へ進むにつれて、背景の色がだんだん暗くなっていく。
  • フェナキストスコープの間に作画アニメーションも入れた。
  • どこかに「オチ」が欲しい。
    • 5.のシーンで、作画の女の子が走りだして、逆回転する。雨が逆回転で晴れていくことで、カタルシスを得る。
  • 星空のシーンに奥行きを出すために、素材を重ねてる。


昨年、イギリスのイベント「onedotzero」で入賞。近日行われる韓国のショーにもノミネートされたそうです。

→onedotzero
http://www.onedotzero.jp/

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■■We should make strange things■■

  • オリジナル作品。
  • トレーラを上映。本編は8分。
  • 「MAS」というバンドの曲を元に作成。

Mas - Wikipedia

TADAHIRO GUNJI | 軍司匡寛 | Graphic Designer | PUBLIC-IMAGE


■企画プロセス

  • ラフイメージ
    • 軍司氏のデザインをアニメーションに。シンプル。手書き感。
  • ラフコンテ
    • ラフイメージを元に作成。白黒、空間をうまく見せられないか?と考えた。


■3Dモデリング

  • Softimageを使用

Softimage|ICEの特別講義もやってるそうです。リンク見つからんかったけど…
ICEは、Softimageに搭載されてるノードベースの開発環境。MELみたいなもんですが、ビジュアル的に構築できる。

  • トゥーンレンダリング
    • 3Dっぽさを軽減するために、チョークをかけたり、ディスプレイスかけて絵を緩くしている。


■ポイント

    • 2Dと3Dを混在させるための効果。
    • 力技は大事。
  • 主人公の頭の模様で遊ぶ
    • メッシュワープ、コーナーピン、パペットワープなどを使って動くテクスチャを作った。
    • これで感情表現を行う。
  • 手書きだけの素材も作成。
    • 常に変化し続けるイメージ。
    • 作画で汗や、波を入れていく。通常は15フレームだが、一部30フレームで描いた。


この作品は、ベルリンの映像イベント「PICTOPLASMA」で上映された。

http://pictoplasma.com/

ガムロードでも販売してるそうです。

https://gumroad.com/l/oruO
ガムロードは、ちょっと前に話題になったけど、どっかの学生が始めたスタートアッププロジェクトです。URLを販売する。

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■■TVアニメーション「フリッジ」■■
http://www.nhk.or.jp/kids/program/shakiin.html

  • 4月からNHK「シャキーン!」の番組内で放送。
  • NHKは厳しくて、ネット配信できない。今度総集編放送するので、そっちで見て欲しい。
  • 冷蔵庫の中での擬人化された物語。
  • 脚本はDIRECTIONSという会社が作成している。

たぶんリンクこれかな?→http://www.directions.jp/


■プロット制作

  • 企画から本制作まで1ヶ月半。
  • キャラクターデザイン。3人のデザイナーが、1案ずつ提案。
    • それぞれのいいところを抽出。
    • 色鉛筆のタッチが気に入られた。年齢層低めのデザイン。


■背景デザイン

  • ヒッチコックの「裏窓」の設定を借りてきた。中庭を通して、お互いの部屋が見える構成。


■セットアップ

  • 体型を考慮して、手足が延びるリグを作成。
  • モデリング、ライティング、セットアップを同じ人がやっている。アニメーションだけ別。


■テクスチャ

  • 1枚だけだと風合いが出ないので、同じ絵を3枚書いて変化するようにする。インデペンデント系のアニメーションではよく使われる技法。線がふるふるします。
  • 色鉛筆で書くのは技術がいる。タッチの入れ方、抜き方が大事。


■ワークフロー

  • 月2本、15日に1本納品するペース。
  • 脚本をNHKからもらって、コンテを2日で仕上げる。
  • その後Vコンテ作成、打合せ。

Vコンテは、コンテ画像の切り抜きでしたね。

  • アニメーション付けで10日かかる。進捗チェックしながら進行。
  • コンポジットで2日
  • レンダリングは4日かかる。レンダリングPCは2台でやってる。
  • プレレコ(音声先録り)なので、先に音声もらえる。
  • 脚本の変更提案もあり。

■コンポジット

  • 背景とキャラは別に素材出ししている。

以下、各パスを列挙します。まちがってたらごめんなさい。

  • 背景
    • カラー
    • インシデンス(incidence)

=Defuseかな?

    • シャドウ
    • インク
  • キャラ
    • カラー
    • インシデンス(オーバーレイ)
    • オクルージョンパス(焼きこみ)
      • 陰影のみのオクルージョンです。絵を締める役割。
    • シャドウ(乗算)
      • シャドウにはブラーをかけてぼかす
    • (マスク)
    • オクルージョンカラー(ソフトライト)
      • こちらは、カラーがブリーディングしたオクルージョン
    • インク
      • インク単体は白黒情報だけど、上記のオクルージョンカラー情報を吸い上げて複雑な色にしている。インクが硬くならないように、ディスプレイスもかけている。

各パスの横のカッコ書きは、AEで合成するときのレイヤーモードです。実際にはそれぞれの透明度もお話しがあったのですが、そこまでメモしきれませんでした。


■ポイント

  • 15フレで動かしている。3Dっぽさをなくすため?
  • 背景のテクスチャもキャラと同様3枚書いて、動かしている。常にどこかが動いているように。
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■■質疑応答■■

Q.ShowReelで使用しているツールを教えて欲しい。


A.

  • AE、SI、フォトショップ、手書き素材。
  • NOTTVのCMはAEのみで作成。
    • ブレはAEのモーションブラー使わずに、実際に絵をずらしている。ブラーを描いてしまう。
  • 東京モード学園のCMではHOUDINIも使ってる。

→HOUDINI。ハリウッドでの使用実績も高い3DCGソフト。エフェクトが得意。
http://www.sidefx.com/

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以上、講演内容でした。


個人的に気になったのは・・・

  • 「フェナキストスコープ」の存在は、割と皆知ってると思うのだけど、それを映像作品に転化させることは、誰でも出来るわけでは無いなあと思った。知ってても、それを映像のアイデアストックとして、必要な時に引き出しから出せるかどうかが重要。知識として知ってるだけではダメだろう。おそらく丹羽様自身がフェナキストスコープの表現にシンパシーを感じていて、いつか使ってみたいと常々考えていたのではないか。自分達も、シンパシーを感じる物事については、それを知識の蓄積として留めずに、いつでも引き出せるストックに昇華させておかないと。
  • 企画プロセスを詳細にご紹介頂いて、非常に参考になりました(森下様は「喋りすぎ」ともおっしゃっていましたがww)。特に「きらきら」は、ストーリーを中心にして全6章の構成が緻密に組まれている部分、そしてそれを表現するための技巧(「逆回転」というオチをつけるとか)が素晴らしいと思った。
  • やっぱオリジナルだよ!!と思う。うまくいけば自社IP、個人IPにもなりうると考えれば、オリジナルの価値は計り知れない。どうしてもクライアントありきの仕事は多くなるけど、企業としても個人としてもオリジナルを作る手を止めてはいけないと思う。Trriple Additional様の講演にもありましたが、まずは作りたいものがあって、それを実現するために仕事をしよう。そうしないとクリエイターは死ぬ。

以上で、「CGWORLD-Spirited-#2」のレポートを〆させて頂きます。
ご登壇頂いた方々に、改めて感謝。

(了)