【メモ】Born Digital スカルプトセミナー その2【CG】

長かったので別記事に分けました。
後半は、ZBrush、Mudbox各ユーザーによるプレゼンテーション。


ZBrushユーザープレゼンテーション

登壇されたのは吉田雅則氏。スクウェアビジュアルワークスでご活躍後、DVD「パペットアニメーション囚人のジレンマ”」を発表されました。(Amazonで購入可能、とのお知らせもありました。)
現在、CGWORLDでZBrushの連載中。またデジタルスカルプトだけでなく、立体造形もやられてます。(こちらが本業ですかね?)
スライドで様々なお仕事画像をご紹介頂きましたが、後で登壇されるセガサミーVEの方からのご依頼で、ソニックの映像作品のキャラクター粘土造形もされていたり。

本日のセミナーはZBrushユーザーも結構参加していたということもあり、「スカルプトとは何ぞや?」という全体的な話ではなく、一部の機能に絞って、詳しく解説していただきました。主に吉田様が常日頃から使っておられる「ディテーリング」=詳細な形状をスカルプトするための方法論について、お話頂きました。
(サンプルデータとして、CGWORLDの連載でも使用された侍のモデルを使用されました)

ディテーリングの方法論

  • しわ、毛穴などの詳細をどうやって描いていったのか。
  • スカルプトではなく、テクスチャベースのディテーリング。

ブラシを早くストロークすると、ドットが出てしまう>解決法は?

1.レジーマウス
  • ジー=遅れるという意味。
  • メニュー>ストローク>レジーマウス>アクティブにするとドットを出さずに素早く描画出来る。
  • ジーステップ=ドットとドットの感覚を大きくすると、ドットが出る。
  • 少なくすると出なくなるが、0にするとまたドットが出る=パラメータ無効になってしまう。
  • ジーステップには、ごく小さい値を入れるといい。
2.プロジェクションマスター(PM)…プラグイン
  • コンセプトが、非常にZBrush的な機能。
  • 説明が難しいが、理解出来るとZBrush自体のコンセプトを理解出来る。


以下、使用方法を簡単に記載します。

  1. テクスチャを作っておく。(3.5からオブジェクトごとにテクスチャが持てるようになった。オブジェクトごとのテクスチャは、ツール>テクスチャからアクセス。)
  2. デフォメーションだけチェックして、PMモードに入る。(DropNow)
  3. コブラシにアルファをアサイン。ZAddで描画すると、シャープなスカルプトが出来る。
  4. PMモードを抜ける(PickUpNow)


…と、ここまで見ると普通のスカルプトとあまり変わらないのですが、実際はPMモードでのスカルプトは3Dオブジェクトに対してではなく、2Dに変換された画像に対して、奥行き情報を持った状態でスカルプトされるようなのです。(=これをZBrushでは「2.5D」と読んでいます)


もちろん、このPMはドットを消すためだけの機能ではなく、ディテーリングにおいて大きな役割を果すものです。
以降、PMを用いた手法も含め、様々なディテーリングの方法をご紹介頂きました。

ディテーリング

1.アルファを使って直接描く。
  • DRUGRECTブラシで描画>ドラッグで、回転、スケールを変えて置けるので便利。(このとき、吉田様はマテリアルにBASICMATERIALを使うそうです。見やすいので。)
2.ステンシル
  • アルファメニューから、MakeSTをONにして使用開始。
  • スペースバーを押して、位置、回転、スケールを変更することが出来る。
  • 場所を決めたら、上からブラシでなぞって描く
  • 良い点…ステンシルを移動しながら、欲しいところに欲しい強さで描ける。
3・ブラシメニュー>カーブエディタを調整>アキュレーシーをアクティブ
  • ブラシモディファイヤの数値を上げる。(30くらい?)
  • ジーマウスもONにすると、シャープなラインを得られる。

この後、上記3つの手法を用いた作例として、カエルのモデルをご紹介頂きました。カエルは2日半〜3日で作成されたそうです。この手法で良い点は直感的に作業出来ると言う事なのですが、悪い点としては、非常にデータが重くなってしまう、ということが上げられます(カエルの場合、200〜300万ポリ)そこで、吉田様がこの点をどう解決しているかというと、前述のPM(プロジェクションマスター)を用いてるとのこと。以下、その解説になります。

テクスチャ(PM)をつかったディテーリング

  1. バンプマップ用に、2048×2048、中間色グレーのテクスチャをNewTextureで作っておく。
  2. ProjectionMaster>Colorにチェックを入れて落とし込む
  3. ブラシのカラーを白にして、テクスチャをDrugrectで描画。Drugrectは移動、スケール、回転を後から調整できるのがいい。
  4. PMモードから抜けると、カラーテクスチャとしてアサインされている。
  5. マテリアルをバンプビューアマテリアルに変更すると、バンプの状態をリアルタイムで見れる。デフォルトだとアンチが効いてないのでONにする。


この手法の利点として…

  • ポリゴンの状態に左右されない=Divを上げてもディテールが消えない。
  • スムーズをかけても、ディテールが消えない。(Smoothは頂点間を平均化するブラシ=平らになる)
  • バンプテクスチャを見ながら、エッジをスカルプトで強調出来る。(バンプで凹凸が現れている部分を強調したほうが、現実感が出る。)


…というようなことを上げられていました。
続いて、CGWORLDの連載でも取り上げられた、侍のモデルを使用しての実践的な解説です。

侍のディテーリング

手の甲の描きこみ

GometryHDを使う方法もあるが、データがヘビーになるので、テクスチャでディテーリングする。

  1. 新しいテクスチャとして、カラー(128,128,128)の4kテクスチャを作成
  2. PMモードに入る>カラーONで落し込み
  3. 指の写真のテクスチャから、Photoshopでハイパス>レベル補正でアルファを作成。(ご自分の指を撮影されたそうです。形状変化があるところに明暗差を。かつ、中間の形状がなくならないように調整すると、使い易いアルファが出来るとも)
  4. アルファを回転、スケールしながら位置を決め、Apply。
  5. PMモードを抜ける。(ピックアップ)
  6. バンプビューアマテリアルをアサインする。

上記手順により、あまりDivを上げなくても、ディテールを作ることができます。また、最後の手順でバンプビューマテリアルに変更していますが、他のマテリアルでもカラーバンプのパラメータを上げることで確認できるとのこと。ZBrushでは仕様上、バンプのかかりかたが反対になっているとのことで、-の値を入れていました。

ディスプレイスメントでの適用方法
  1. 先程作成したのバンプのテクスチャをMakeAlphaでアルファに放り込む。(←ここの手順がよくわかんなかったです。)
  2. なんでもいいので、ダミーのテクスチャを作っておく。
  3. ディスプレイスメントはマテリアルに依存しないので、そのままビュー上で確認できる。


ProjectionMasterを使用する利点は、テクスチャ(2.5D)なので編集が簡単で、やり直しも簡単というところだそうです。
以降、PMについていくつか補足頂きました。

2.5Dブラシがいろいろある
  • クローンブラシ=Psのコピーと同じ。
  • スプレーで描画したり。
  • コブラシで超極細のアルファで描いていったり。
  • ブラーブラシでぼかしたり。


その後、PMを用いたディテーリングの手順を再度やっていただきました。なにぶんこのあたりの機能を知らずに書いてますので…後で自分で試して、間違っていたら修正します。

  1. グレーのコンスタントなマテリアルにして、カラーのみでPMに落し込む。
  2. PM上でテクスチャを描画。
  3. PMから戻ってピックアップ。バンプマップとして焼付。
  4. クローンして、ディスプレイスにも持ってこれる。
  5. メイクアルファ。
  6. ディスプレイスから、今のアルファを読み込む。(このときダミーテクスチャがいる)
  7. さらに、形状に焼き付けることも出来る。


上記のように、テクスチャで納得行くまで形状を詰めて、後でポリゴンにアプライする方法にも触れられていました。
最後に、もう1回くらいならDivideしてもいいとも。ちょっとだけ、形状が甘くなってしまうのが残念…とおっしゃってましたが。

(!バグ)PMモードから抜けたときにカラーが黒だと、マテリアルが標準のWAXに戻ってしまうそうです。何か別の色にしておけば大丈夫。

ZApplink

Photoshopなどのペイントソフトと連携する機能。テクスチャの相互やりとりが出来るそうです。あまり細かい説明はありませんでした。


…以上になります。文字にしただけでも、結構なボリュームのプレゼンだったことが分かりますね。吉田様に改めて感謝の拍手を送りたいと思います。ありがとうございました。


<補足>
プレゼン冒頭に、スカルプトツールの名前をいくつか上げられていました(3D-Coat、modoなど)が、ひとつだけよく聞き取れなかったものがありました。「サイロ」と仰ってたような気がするのですが…僕は初耳です。後で調べておこう。