【メモ】Born Digital スカルプトセミナー その3【CG】
これで最後の記事になります。Mudboxのユーザープレゼンテーションは、SSVE(セガサミービジュアルエンタテインメント)の西田健一様。
■ZBrushユーザープレゼンテーション
西田様のプレゼンテーションは、直接その場でソフトを操作するのではなく、作業中のデスクトップを録画したムービー(もちろん早回しです)を再生しながら、補足を加える形で進められました。
使用したモデルは、Area(Autodeskのユーザー向けサイト)英語版に掲載するユーザー事例として作成したクリーチャー。(上記写真左。3週間くらいで作ったものだそうです。スゴイ!)Mudbox2011の海外向けアドバタイズにも使用されたそうです。
また、このプレゼンテーションのテーマは「コンセプトからフィニッシュまで」。Mudboxだけでなく、ZBrushなど他のソフトでも使えるワークフローとしてご説明頂きました。実際、ローポリの状態からレンダリング、コンポジットまで、全ての工程を1時間のプレゼンで御披露いただきまして、急ぎ足ではありましたが、こちらも有意義な時間でした。
以下、アジェンダになります。(実際は英語だったのですが、メモ取れなかったので口頭で行って頂いた日本語で記載します。)
- ベースメッシュ作成(MAYA)
- プライマリフォーム
- セカンダリフォーム
- ターシャリフォーム(3番目。ここまでの工程をコンセプトマケットと呼ばれていました)
- ドローイングワイヤーフレーム
- リトポロジー(専用ソフトを使用)
- ディスプレイスメントのエクスポート
- ディスプレイスメントのアサイン
- ファイナルディテール
- バンプマップ
- カラーマップ
- レンダリング(MAYA:mentalray)
- コンポジット(Toxik)
- プレビュー
以上、14工程です。本当に1時間で終わるのか…一部を詳しく説明された吉田様のプレゼントは対照的ですね。では、各工程の詳細を記載していきます。
1.ベースメッシュ作成(MAYA)
MAYAでモデリング。Mudboxにエクスポートする際、スケールを10倍にするとちょうどいい。
2.プライマリフォーム(Mudbox)
このムービーが一番長く、15分くらいの長さでした。以下、ご本人の解説。
- 細かいディテールは必要ない。大きいフォームを意識する。
- エッジを立てた部分があるのは、顔の各部位のランドマークをしっかり作るため。
- ぜひスペキュラONで作業して欲しい。
- 骨格、筋肉、大きな皺、くぼみなどを作っていく。
- ここでしっかり作っておくと、プライマリだけで結構なクオリティが出せる。
- 色々な角度で見たり、ライトの向きを変えながら作業。
- Ctrl+L、Shift+Lで、シルエットを確認できたりする。
- 骨から作り始めて、肉を盛っていくような作り方をする人もいる。
- フリーズブラシ(=マスク?)使いながら。
- スカルプト、スムーズ、ワックス、バルジ、ピンチ、スクレイプなどよく使う。
- これらのブラシはテンキーにホットキーとして登録している。
- Mudboxには隠されてるホットキーが結構ある。
- 解剖学書や、動物のリファレンスなどを見ながら作業する。(今回は牛、カバ、サイなど)
- ムービーでは多少詳細も入れているが、形状が取れれば面のみの構成で十分。
- プライマリは一番大事
- シンメトリーは、セカンダリの途中くらいまで使う。
- ちょっとだけポーズが違う場合(耳の角度が違うとか)も、タンジェントミラーという機能を使えばシンメトリと同じ感覚で作業できる。
- ポーズツールで顔の角度を変えてみたり。
…ここまでがプライマリフォームの工程です。ご本人の弁通り、すでにかなりのクオリティまで出来上がっていました。ただご本人はこの段階での作業はあまり好きでないそうです。大事な工程であるために、緊張して楽しめないとか…。詳細を作っていくほうがお好きみたいです。
3.セカンダリフォーム(Mudbox)
プライマリに、細かいディテールを加えていく工程です。
4.ターシャリフォーム(Mudbox)
セカンダリよりもさらにDivを上げて作業します。400万ポリ以上。
- 可能な限り、細かいディテールに集中して仕上げる。
- 必要ならスタンプ、ステンシルなども使って作業するが、あまり多様はよくないかも。(西田様ご本人的には)
- ディテールを、この時点で入れられる限界まで入れていく。
- リトポロジーの後に、さらに細かいディテールを入れる。
- 環境ライトを入れると重くなる。(このときは、メイン1灯と環境ライトが入ってました)
- スカルプトブラシのフォールオフを一番小さくして、細かいラインを引いていく。(ナイフでも代用可能)
ここまでの工程で、コンセプトマケットは完了となります。
5.ワイヤーフレームデザイン(Mudbox)
ペイントレイヤーに、ワイヤーフレームを描いていく工程です。
- 詳細はいらないので、400万ポリより下のモデルで作業すれば良い。
- アニメーションさせる場合などは、必要な部分を細く分割。
- エッジループの流れを意識する。後のリトポロジー作業が楽になる。
- 四角ポリゴンで構成されるように。
- 青い矢印で、エッジループの流れを描く。しわの流れ、筋肉の向き、アニメーションなど問題ないかチェックしながら。
- ポール(5つ以上のエッジが交わるポイント)の置き場所が大事。
6.リトポロジー(専用ソフト)
「Topogun」というリトポロジー専用ソフトを使う。1万円くらいなので安価。
前の工程で作成したワイヤーフレームデザインをガイドにして作業。
いろんな方法で面を張ることが出来る。
りトポロジーが完成したら、これをレンダリング用のモデルとして使用する。
7.ディスプレイスメントのエクスポート(MAYA→Mudbox)
ターシャリフォームから、ディスプレイスメントマップを書きだします。
<MAYA>
- MAYA上で、りトポロジーしたモデルのUVを開いておく。
- 十分な解像度を得るため、顔と体の2パッチで書き出す。(ともに4096×4096?)
- ムービーでは都合上目と口に穴をあけておいたが、閉じておいた方がよい。
↓
<Mudbox>
ターゲットモデルとしてりトポロジしたモデルを読み込み、そこにコンセプトマケット(ターシャリ)の形状を転写する。
そのディスプレイス情報を、32bit-floatでマップに書き出す。
9.ファイナルディテール(Mudbox)
ここで、可能な限り細かいディテールを入れる。完了したら、後にMAYAで使用するディスプレイスメントマップとベクターディスプレイスメントマップを書き出す。
10.バンプマップ(Mudbox)
11.カラーマップ(Mudbox)
ペイントについては各自の方法論があるだろうということで詳細な説明はありませんでしたが、2011でペイント機能がパワーアップしているので、その一部を紹介されてましたね。
- ドライブラシ…溝のくぼんだところだけをペイント出来る。
- スタンプ、ステンシルなども使っていく。
- 寒色系のレイヤー>暖色系のレイヤーのように塗り重ねて行く。
- 縞模様なども入れたり。
…と、ここまででMudboxでの作業は完了し、あとはMAYA上での作業になります。
12.レンダリング(MAYA:mentalray)
- リトポロジーしたターゲットモデルを1度だけ分割したものをレンダー用に使用。
- mentalrayのディスプレイスを使用する。
- 「MultiChannelSetup」という便利なMELがあるので、使用して欲しい。(PixelCG.comのサイトからダウンロード可能)Mudboxで設定したテクスチャを選択するだけで、自動的にハイパーシェードを繋げてくれる。
- その後SSSのテストを行い、SSSに先程のハイパーシェードをつなぎ直す。
- 今回のキャラの場合、SSSのBackScatterにのみテクスチャが必要だったので作成し、アサイン。
- ファーも適用。(Maya:Fur)
- 32bit EXRでレンダリングする。
- ベクターディスプレイスメントマップは、まだMAYA標準では適用出来ないが、個人でカスタムプラグインを作ってくれた人がいるので、それを利用した。
13.コンポジット(Toxik)
- カラー、AO、ファー、スペキュラを別パスでレンダリングし、Toxikでコンポジット。
- Toxikで背景の設定も行った。
- Toxikはノードベースで分かりやすい。
14.プレビュー
完成です。ターンテーブルで見せていただきました。
以上、書き起こした自分も疲れました…。
実際に登壇された西田様は、それ以上に大変だったと思います。あらためて感謝の拍手をお送り致します!ありがとうございました!!
<補足>
新バージョン2011の出たばかりのMudboxですが、すでに次期バージョンのアルファテストが始まっているそうです。西田様からも様々な要望を出されているとのこと。楽しみですね。