パチンコCGのこと1・「間」とか「尺」とか

今年に入ってから、いつか書こう書こうと思っていたのですが…僕がゲーム業界からパチンコ業界に移ってぼちぼち7年。ここいらでその間に感じたこと失敗したこと学んだことなんかを記事にまとめとこうと思います。

思いついたことから適当に書いていくので、順番的には読みづらいかもしれません。(後で少し読みやすくまとめるかも)

また、この業界的に書けること、書けないことあると思います。ただなるべく一般的な内容に変換して書くから大丈夫かな?
もし間違いや、書いちゃいけないこと書いてたらご指摘ください。躊躇なく直します。(プライド無し)

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僕のように、ゲーム業界からパチンコ業界へ(映像業界からでも同じかも)移った人間にとって、パチンコ特有の「間」とか「尺」ってやつがとにかく鬼門になります。
特に、業界に入るまでパチンコのルール自体知らない人とかは特に強く感じるのでは無いかと思います。(僕もそうでした。今では研究のために多少やります)

パチンコは、つまるところ「当たり」か「はずれ」かの2択のゲームです。(実際には当たりにも「突確」とか「小当り」とか色々種類があるのですが、ここでは割愛します)

「当たり」か「はずれ」かは、完全に「抽選」によって決められていて、そこにプレイヤーが介在する余地はありません。大抵のプレイヤーは当然それを知ったうえでパチンコを打っています。たまにボタンの入力を促す場合もあり、必死にボタンを連打する人もいますが、それによって「当たり」「はずれ」が左右されることはありません。
パチンコ玉が「チャッカー」という抽選装置に入った時点で、すでに当たりかはずれかは決まっているのです。

では、どうやってすでに結果が決まっているものをプレイヤーに「面白く」見せているのでしょうか。

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パチンコで「当たり」か「はずれ」の結果が出るまでの時間は、その時々によって異なりますが、短い物で2〜12秒、長いものでは3〜4分程度の時間を要します。その間、なるべくギリギリ最後までプレイヤーに結果がわからないように、パチンコ台中央の「液晶」画面の映像や、音やLEDの光で、プレイヤーを興奮させたり、がっかりさせたり、期待させたり、裏切ったり、あの手この手を使ってプレイヤーの感情を揺さぶります。

これらの「映像」「音」「光」の効果のことを、一般にパチンコの「演出」といいます。

この演出の中でも「映像」は近年、非常に大きなウェイトを占めていて、各社、映像に力を入れたパチンコ台を発売していることは、皆さんもよくご存知だと思います。数年前からこのパチンコ液晶CGの世界に、ゲーム会社や映像業界の参入が増えているのは、こういった理由なのです。

プレイヤーをドキドキさせるポイントとしては、

  • リーチになるかならないか
  • スペシャルリーチ(ムービー映像を多用したリーチ)になるかならないか
  • ハズレたあとに、逆転で当たったりしないか

などなどいくつもあるのですが、特に、「当たり」か「はずれ」かの分岐点の手前が最大の演出の「見せ場」になり、ここであの手この手を使ってプレイヤーのドキドキ感を最高潮まで高めていきます。
この「当たり」「はずれ」の分岐点で行う演出のことを特に「煽り(アオリ)」と呼んでいます。

パチンコにおける「アオリ」に要する時間…一般的には「間」とか「尺」とか呼ばれるものが、我々ゲーム上がりや映像畑の人間には、驚くほど長く感じられるのです。

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ゲームでも映像でも、演出的に盛り上げる場面ではもちろんある程度の「間」を使います。むしろ「間」が必要ない演出方法など無いとは思いますので、当然、映像作りを経験されている方には釈迦に説法なのですが…ただ、パチンコで必要な「間」というやつは、その常識をおそらく超えるものです。

  • 当たり間際では、とにかくこれでもか、という位に「間」をとって、しっかり「アオリ」ます。
  • キャラクターのズームアップ+集中線だけで、数秒〜10数秒は平気でもたせます。
  • 場合によっては、数秒間、完全に絵を止めたりします。

これらの手法は、映像単体として見ると退屈な、あわよくばテンポを悪くしてしまうようなものになってしまいがちですが、パチンコにおいては正しい「演出」なのです。パチンコのゲームとしてのキモとなる「当たり」か「はずれ」かの分岐点で、プレイヤーの期待を最大限まで引き上げるためには、通常の映像で正しい「間」では全く足りないのです。

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実際の仕事でも、自分で十分だろう、と思って出すVコンテは、たいてい「アオリが足りない」といって戻って来ます。

さすがに最近はそれも加味して作っているので半分くらいは大丈夫なのですが、半分はそれでも足りない、ということがしばしばです。
メーカーさんや担当者によってもそのあたりの時間感覚は異なりますし、アオリ方も、止め絵を好む場合もあったり、止めないで欲しい、という場合もあります。


この「間」とか「アオリ」とかいった部分の時間感覚は、おそらく実際にパチンコを打ち込んでみるか、ある程度業界内で失敗を経験しないとわからないかもしれません。もし、そうではない人がパチンコの液晶CGを作成するのであれば、自分で「十分だろう」と思ったものに、気持ち「間」を足してあげると、少し、仕事がうまくいくようになるかもしれません。


(了)