【レポート】CGWORLD 2011 -クリエイティブ カンファレンス〜⑤ デジタル・フロンティア

>>デジタル・フロンティア Web http://www.dfx.co.jp/


BVは、映画館でも公開された鉄拳のフルCGムービーです。

すでにamazonでも予約しちゃいました。

鉄拳ハイブリッド - PS3

鉄拳ハイブリッド - PS3


実はこの公演中にMBAのバッテリーが切れてしまい(途中でビービー音がなってしまいました。すみません…)、後半は手書きのメモからの書き起こしです。しかも内容がかなり多岐に渡っていたので…ついていくだけで大変でした。

以下、講演の内容です。

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■会社紹介(会社紹介ビデオが流れましたww)

モーションキャプチャスタジオ「オパキス」を持っている。(BVでも使用)

>CGWORLD.jpの記事 http://cgworld.jp/flashnews/service/-vicon-t160100.html
・フェイシャルキャプチャスタジオも。音声も取れるすごいやつ。
・最初のCGムービー作品は「ぼのぼの」→今回の鉄拳まで6作作っている。
・部署は以下の4つにわかれている。

CG制作室
開発室・・・プラグイン開発とか。
CG室・・・mayaをメインで使用。
モーションキャプチャ

・デッサン教室、粘土教室なんかも実施している。
→これがあるからDFに来たって人もいる。

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■■■FXメイキング■■■

・エフェクトチームの紹介

人員・・・14名。専業チーム
PCスペック・・・12core、メモリ24G
使用ソフト・・・maya,max


・プランニング
エフェクトを徹底的に分析。
持ち寄った案を全員で話し合う。手法を検討。後輩に指導。
前準備をしっかりやってTRY&エラーを少なく。


・プリセット作成(汎用的なもの作成)


・エフェクトライブラリを作成。
タグ、フリーワードで検索できる。
シミュレーションのキャッシュまで登録しているのですぐ使用できる。
マニュアル作成のインターフェースまで用意して、投稿しやすくする。

ライブラリ化のメリット
・安定したアウトプット
・スピードアップ
・情報の正確さ

デメリット
・ライブラリに頼りすぎる。
→新人さんには、プリセットではできないチャレンジカットを担当させる。


・エフェクトカット作成
ライト、レンダリング、コンポジットまでチーム内で完結


・TIPS
ブログベースで蓄積。

メリット
・情報の共有
・検索性
・個人に依存しない

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■ブラッド・ベンジェンス(BV)のメイキング

・TOTAL1300ショット
・エフェクトカットは500ショット・・・7ヶ月、最大15名体制
・準備で2ヶ月(プリセット作成など)
・使用ソフトはmaya,max半々。水でrealflow使用。

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立体視におけるエフェクト作成

・S3D(立体視)のためにできないこと
コンポジットでの2D処理・・・メッシュワープ、ガベージ(これなんだろうね?)禁止
位置調整も禁止。

・やりたかったこと
立体視を生かした臨場感あるエフェクト

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■エフェクトの簡略化・自動化。

・遠方の雨、煙などの環境エフェクトはシミュレーションせず、板にテクスチャで処理。>大幅工数削減。
→煙と炎を分離できるように作成。(各々で使用できる)
→雨は、距離に応じて3種類作成。シームレスなのでタイリング可能。
→フォグも同様。mayaでは筒状に配置する。

・エフェクト作業の自動化。→バーニア、銃のマズルフラッシュなど

・maya→maxへのコンバートも自動化した。(ジオメトリキャッシュ化→コンバートまで)
→今後もより自動化を進めていきたい。

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■平八魔神メイキング

画像はただの平八なのですが…映画に登場した「平八魔神」という巨大な平八の周りに「木人」というキャラクターがパーティクルで配置されたエフェクト作成のメイキングです。
(映像が無いとよく分からないかもしれませんが・・・)


・パーティクルインスタンサー(mayaの機能)で木人を配置。情報量を多くした。
http://digicon6.typepad.jp/main/2010/12/autodesk-3dec-3.html

木人配置の専用UVマップを用意。木人は30パターン。

・max+ThinkingParticle(以下TP)で、木人の崩壊を表現。
(TPはハイエンド作品で最近良く使われているパーティクルシステムです。>http://www.too.com/digitalmedia/cgplug/index.php?id=3

TPで、高速なリジッドボディを実現。
崩壊シーンでは、ダミーの範囲に入ったら木人が重力で落ちるようにしている。
パーティクルのみで動きをコントロール→キーは全く打っていない。
デメリット>TPはデザイナには扱いが難しい。
メリット>一度組んだアセット(部品)が、再利用出来る。

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■エフェクトメイキングまとめ

・自動化
・簡略化
・情報共有

・・・本編の作業に集中できる!

<補足>
マットペイント以外は、全てS3D(立体視)でレンダリングしている。


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■■■フェイシャルメイキング■■■


・スローガン

キャラ崩れしても、表情豊かに!

・様々なチャレンジをした。

技術向上!・・・クオリティアップのために
事前準備!・・・・・・マーカー配置、アクターへの指示、打合せ
勇気をもって!・・・表情が弱くならないように

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■フェイシャルリグの構築
・まず「アクションユニット」(表情の要素を細分化したもの)を考える。

喜怒哀楽などの表情をコンテから洗い出し、最小単位にまとめていく。
各部位ごとに、細かい動きまで。(口角をあげる、口をすぼめる、など)

・ユニットが多すぎてもアニメーションが大変になるだけなので、最適化が必要。

・各アクションユニットをどの方法で動かすか考える

TARGET BASE・・・ブレンド(モーフ)
JOINT BASE・・・スキン
DEFORMER BASE ・・・マッスルなどのデフォーマ

・BVでは、ターゲット+マッスルデフォーマを使用した。

<ターゲットの利点>
表情の統一が取れる
ターゲット一つで、いろんな表情が出来る

<ターゲットの欠点>
動きがリニアになる
複数ターゲット使用時に破綻が起こる

→それを補うためにマッスルを使用。

全身マッスルでは重くて実用的でないが、ターゲットと組み合わせて部分的に使用することでマッスルを活用できた。

・モブキャラクターはジョイントベースで作成した。
→セットアップが速い、軽い、といった利点がある。

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■ターゲットベース+マッスルの作例(映像見ながら解説頂きました)

シャオユウの場合、全75ターゲットを作成。

・関連付け
→コントローラーでターゲットが動くように。

・マッスル(筋肉)&リンクル(皺)
→肉の柔らかさを表現

・フェイシャル検証
→フェイシャルキャプチャデータを流し込んだだけで、違和感なく動くレベルに。

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■フェイシャル撮影

・撮影順序を考慮してスケジュールを組んだ。以下の1→3の順で。
→午前と午後で表情筋の柔らかさが違う。午前中は表情が硬い。

1.アクションパート内のドラマカット
表情が固く、険しい方がよい。演技の指示が出しやすい。

2.感情が単調なドラマパート
普通にしゃべるショット

3.複雑に表情が変化するショット、キーショット
微妙な表情、泣き顔など。

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■マーカーの配置

・これまでは、キャプチャの担当におまかせだった

→今回は、マーカー位置を指定した。
→実際にアクターの顔に指で触れながら、一番動くポイントに配置。
(例えばキャラのマーカー位置と異なっても、一番動くポイントを指定したり)

・表情は大きく動かす。過剰なくらいに。

→多いものを減らすのは簡単。
→よいノイズが取れる。
→動きが小さいと、コンポジット後に馴染んでしまうため。

・他には、現場の空気感、雰囲気を重視した。盛り上げる。

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■アニメーション作業

・自動パイプラインを構築

「ADL」という独自形式を使用。
「AUTOMATE」というシステム
→音声データのカットポイントが自動的に読み込まれる。
→撮影の連番データを持ってくる、とか全部自動化した。

・ベースのデータを調整して、フィニッシュ

目、舌の手付け
キャプチャデータの修正

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■良いフェイシャルアニメをつくるには・・・

・顔の筋肉を考える
→自分の顔に触れて、筋肉の連動性を確かめる。

・目の動きを重要視
→感情を伝えるのに重要。

・演出を理解する、理解させる

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■最後に・・・

いい表情をさせたかったら、自分たちがいい表情を!!
→チーム内をいつも明るく!


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以上が講演の内容です。

エフェクト、フェイシャルともに、技術的な話はもちろんなのですが、作業の効率化や意識的な問題など、実作業以外の部分での努力、意識付けの重要性を感じさせてくれる内容だったかと思います。

特に、エフェクトのライブラリ化、TIPSの集積は職場でも進めなきゃいけないな…と思っていたところなので、是非、DF様の手法を参考にさせていただきたいです。


この後、本カンファレンスは「VFX JAPAN」という業界団体発足のイベントや懇親会など、21:00ごろまで続いたのですが、そこまで参加する体力は無く…退散。ただ帰り際に、一昨年専門学校で教えていた学生とばったり会ったので、軽く話&飲んで帰りました。彼も、とあるゲームのソフトハウスで頑張っているようだったので、自分ももう若くはないですが負けてられないな!と思います。(逆に、既卒現役含めて彼以外知ってる学生に合わなかったとは…何たることだ!)


VFX JAPAN発足イベントのトーク書き起こし
20111027-VFXJapan
>>http://www.shirai.la/members/akihiko-shirai/log/20111027-vfxjapan

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